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お酒と刺身で痛風になる?というお話

にーはお!ひいろです。
全力で激しい運動をするより、勝手にどこかに行ってしまう気まぐれな娘たちと人混みに出かける方が数倍くたびれます。
まだまだ修行が足りません…。

さて、膝の痛みを訴える落語家の方が来院された時のことです。
一週間後に講演会があるとのこと、しかし、膝が痛くて正座できないというのです。

70歳、80歳を過ぎた大御所ならば椅子のようなものに座って演目を披露することは許されますが、自分はまだ50歳。そんなことは絶対に避けたい、と言うのです。確かに、人気番組笑点を見ていても正座をしない落語家さんはいませんよね。

ご本人は、本番まで一週間しかないのですから、焦ります。
実際に診てみると、膝の少し上の太ももの辺りが赤くなっています。
膝の関節ではなかったのです。そこは「足の太陰脾経」つまり消化器系と関係している部位でした。

特徴的だったのは、舌が白く苔が厚いのです。
これは、膝関節の問題ではない、と感じました。

こんなやりとりです。

ひ:ビールはよく飲みますか?
落:大好きなのでよく飲みます。
ひ:刺身はよく食べますか?
落:数日前、夜中に寿司を食べてビールを飲みました。
ひ:その後から膝が痛くてなりませんでしたか?
落:はい。その直後から痛みが出ました。

ビールは冷たいので、身体の内側から冷えてしまいます。
また、生ものも内臓が冷やします。

痛風は体内の尿酸がたまることで発症するというのが現代医学の考え方です。
ビールと海鮮を摂ったことの相乗効果で身体が冷えて痛風になったというのが中国医学の見方です。
もちろん、単発で飲んだり食べたりしただけではこのような症状は出ないはずです。

しかも、この方は以前、生死の境を行き来するほどの大病を患ったことがあり、腹部に大きな手術痕がありました。手術やケガをすると経絡が切断もしくは分断されるので、気血の流れが悪くなります。
もともと循環が悪い上に、冷えは気血の流れを渋滞させます。

さらに日ごろの疲れやストレスがあれば、なおさら循環は悪化します。
これで痛風のできあがりです。
全ての病気も同じですが、今までの積み重ねにより、何かが引き金となって発症します。
ちなみに、痛風に多いのは足の親指の付け根あたりが痛みが出やすいと言われていますが、まさに消化器系と関係する脾経の場所です。

ところで、寿司という食べ物は本当によくできています。
大葉は海鮮の毒を解毒し、温める作用があります。
わさびは温めて、疎通させる作用があります。
酢も温める作用があります。
昔の人は経験的か、感覚的かはわかりませんが、よくわかっていたのでしょう。

また、アメリカ人の患者さんが痛風で来院されたこともありました。
以前も発症したことがあったようで、この激痛は痛風の再発とわかったそうです。
これから治療して欲しいので今から行く、と電話がありました。

しばらくすると、エレベーターホールから叫び声が聞こえたのです。最初、何かわかりませんでした。
今まで治療した中で最も重症の痛風でした。何をしても痛みが強く、人の肩を借りてようやく歩けるのです。

舌が真っ白で苔が非常に厚い。
冷えが蓄積した典型的な舌です。
案の定、普段から、ビールをかなり飲み、冷たい水をよく飲む習慣があるとのことでした。

話はそれますが、以前、治療した方の旦那さんがハンガリー人でした。
水は一切飲まず、コーヒーとコーラしか飲まないというのです。
もちろん、人によるのでしょうけど、欧米人の食習慣は本当にすごいですね。

アメリカ人の治療は困難を極めました。

冷えが強すぎるため、痛みが起こっている場所を治療すると、また別のところに痛みが移動するのです。
面白いことに痛みの出る場所が脾経と胃経なのです。
つまり、共に消化器系と関係する場所です。
消化器系が甚だしく冷えているからです。

通常、軽い人だと一回で痛みは消えます。

このアメリカ人の患者さんは二回の治療でも痛みが消えず、近所に宿泊されていたので往診しました。
部屋に行くとペットボトルにおしっこをしていました。
痛みのため、トイレにも行けなかったようでした。
結局一週間の日本滞在を部屋で過ごしたようです。何とも気の毒な話です。
僕には、ここまで悪くなってしまうとすぐに回復させるのは難しいです。

ですから、ビール、お刺身などの生ものが好きな人は、普段から身体を冷やさないように気を付けてくださいね、というお話でした。

それでは、再見!!

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この記事を書いた人

傳統醫學研究所日色鍼灸院院長。
約10年の中国留学の後、横浜中華街にて開業。鍼灸学士、医学博士。
世界医学気功学会常務理事。

鍼灸、気功、徒手療法などの施術を中心に、養生(生活習慣)の取り組みから身体をサポートする。

プライベートでは、5人の子供の父親。

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