反回神経麻痺と鍼灸治療~声が出なくなったのは本当の原因とは?~

こんにちは。
横浜中華街のひいろです。
香港の中医師陳戈同志が帰国してしまい、寂しいです…。
寂しさをこらえ、昨日は朝から一日修行でした。
武術の練習で、師匠に刀で手を切られ、ちょっぴり傷が。
もちろん、模造刀なので切れないようにはなっているはずなのですが、本物だったらと思うと恐ろしいですね。
その後、南拳の練習の時に、頸動脈に手刀をくらい、悶絶。
頑張って修行に励みます…。

 

さて、先日、突然声が出なくなってしまった方が来院されました。
大病院では反回神経麻痺の診断を受けました。
反回神経は、声帯を動かす筋肉を支配しています。

病院に行ったものの、特に治療法はなく、仕方がないので東京で有名な鍼灸院に治療に行かれたそうです。
有名な鍼灸院では30回の治療後も、それほど大きな変化はなく、治療院に通うのが大変だったため、横浜中華街にある当院に来られたのでした。

病院で下された診断は反回神経麻痺でしたが、私が診る限りではどうも様子が違うようなのです。
もちろん、私は鍼灸師ですので、診断することはできません。

なぜ、反回神経麻痺という診断を疑ったのか?
それは、この方が過去にガンを8回患っており、何回も大手術を受けていたからです。
腹部にはかなり大きな傷痕がいくつも残っていました。

手術の痕に声が出なくなるのには、理由があります。
全身麻酔の際、気管に挿管しますが、この時に声帯を構成している披裂軟骨が脱臼してしまうことがあります。
そうなると、声帯がしっかりと働くことができず、声が出なくなってしまうのです。
だらんとたるんでしまった声帯を見て「反回神経麻痺」と診断されてしまったのです。
その証拠に、有名な鍼灸院の先生は反回神経の機能が回復するような治療を30回もしたのに、ほとんど効果が得られなかったのです。

この患者さんは低音と中音がほとんど出ませんでした。
声を出してもらっても、声帯が震えません。
私はどのように治療をしたかというと、のどの骨を調整しました。
のどには、舌骨、甲状軟骨、輪状軟骨、そして、披裂軟骨という骨があります。
いわゆる「のどぼとけ」といわれる、首の前面のとび出た部分が甲状軟骨です。
首前面では骨と筋肉が複雑にバランスを取っています。
もちろん、首の後面と側面も一緒にバランスを取っています。

甲状軟骨の後ろにある、青い骨が披裂軟骨(右)です。解剖学を学ばないと構造がわからないので、この治療ができません。まさか、今になって解剖学の重要性に気付かされるとは思いませんでした。吉田先生ありがとうございます!!のどの骨の歪みが発声と関係しているとは…。ちなみに、治療の時は皮膚に触れるくらいのやさしい力で調整します。強い力は使ってはいけません。のどはデリケートな部分ですからね。この写真のアプリ「アトラス2018」非常に使いやすくいいですよ!!

この患者さんののどを見ると、甲状軟骨と輪状軟骨が斜めに倒れてしまっていました。
また、舌骨も歪んでいたため、発声に影響を及ぼしていたのです。
また、ものを飲み込む時に、気管に飲み込んだものが入ってしまわないように蓋の役割をしている喉頭蓋もゆるくなっているようでした。

そして、披裂軟骨の調整をすると「コクン」と骨の音がしました。
やはり、披裂軟骨の位置が歪んでしまっていたのです。

そこで、声を出してもらうと今まで出なかった低音が出るようになったのです。
今は「ファ」の音がもっとも苦手な音ですが、低音と中音がかなり出るようになりました。

鍼灸治療だけでは、この患者さんの治療は非常に難しいと思います。
私に更なる実力があったのならば、鍼灸だけで効果を得ることができたかもしれません。

今回の治療は吉田邦夫先生が教えて下さったBRM療法を元に鍼灸と気功を組み合わせて行いました。
治療中は吉田先生の顔が何回も浮かびました。

この方のように、8回も手術をしていると生命力が非常に落ちます。
低下した生命力を高めるのは徒手療法よりも気功が適していると思います。
滞った気血を通すのには鍼治療が最も適しています。
そして、崩れた構造を調整するのには、気功も鍼灸も適していません。
やはり、構造の調整には徒手療法が必須であると痛感しました。

もうひとつ、重要なのは、この患者さんが最低8回は気管挿管をしているということです。
結果として、披裂軟骨がグラグラにゆるんでしまっていると考えられます。

おそらく、通常の披裂軟骨の脱臼ならば、一回の治療で声が出るようになることでしょう。
しかし、この方は調整がうまくいったかと思えば、車の運転後に声が出にくくなるというのです。
よく観察してみると、身体中が緊張しています。
のどを触った状態で、手を握ってもらうと、のどが強く緊張することを発見しました。
つまり、ハンドルを握ることでのどが緊張し、のどの骨が歪むために声が出にくくなるということだったのです。

そうなると、反回神経麻痺が関係しているかどうかが怪しいですよね。

正直、今日の記事は誰が喜ぶかわかりませんが、患者さんが非常に喜んでくれているので、私も本当に嬉しいです。

そういう訳で、再見!!

なんと!!まさかの蘭州拉麺!!横浜中華街に出現です!!でも、味はかなり本場のものとは異なりますが、また行ってみたいと思いました。美味しかったです!!大根を薄く切り、麺がもっと細いとなお良いです。それをお店の人にアドバイスしたら、「うちは蘭州拉麺とちょっと違うのよね~」と言ってました…。改善よろしくお願いします!!

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この記事を書いた人

傳統醫學研究所日色鍼灸院院長。
約10年の中国留学の後、横浜中華街にて開業。鍼灸学士、医学博士。
世界医学気功学会常務理事。

鍼灸、気功、徒手療法などの施術を中心に、養生(生活習慣)の取り組みから身体をサポートする。

プライベートでは、5人の子供の父親。

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 医術は奥が深いですね〜
    蘭州ラーメン流行ってるみたいですね〜〜
    味が日本ぽくアレンジされてるのかな?
    本場の味は未だ未体験、いつか蘭州に行って食べてみたいですね

    • お久しぶりです!
      治療も生命も奥が深すぎてまだまだ先が見えません(#^^#)
      中華街の蘭州拉麺は、蘭州の人ではないそうで、かなり味にばらつきがある感じです…。
      今後の発展に期待です、
      蘭州で食べるのと、北京で食べるのでは味が違いますよ。
      やはり、水が違うと料理の味が全く異なるようです。

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