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漢方薬、カゼの引きはじめに…??

ひいろです。
またしても、気温がさらに下がってしまいましたね。
朝起きて驚きました…。
ただでさえ、体調崩している人が多いのに、このお天気でカゼを引く人がまた増えそうですね。
僕も気を付けます!

さて、この際なので、前回に引き続きカゼと漢方薬についてお伝えします。
「カゼの時はこの漢方を飲みましょう!」というお話ではありません。
ごめんなさい!

病気が発症するのは、簡単に言うと体力、気力の衰えです。
四季に関係なく、カゼを引くことがありますよね。
カゼを引く機序は様々ですが、夏と冬ではカゼの性質が異なり、春と秋のカゼでも病態がことなります。
しかし、その根本は「正気」の弱りです。
「邪気」に抵抗する力が低下したことにより病気になるのです。

「正気存内、邪不可干」(『素問遺篇・刺法論』)という記載があります。
それは「正気が内側で充実していれば、邪気が侵犯することはできない」ということです。
さらに言うのならば、気血が滞りなく身体のすみずみまで流れ、経絡、五臓六腑が充実いていれば、邪気が体内において発生することは難しく、病気になることはないということです。

例えるならば、自国の軍事力が強大であれば、他国は侵略することができないのと同じです。
昨今は、サイバー犯罪やテロが国の機能を脅かす時代ですが、犯罪防止を取り締まる組織がしっかりしていれば未然に防げるようなものであると考えられます。
まぁ、あくまでもたとえ話ですよ。現実社会においてはなかなか大変な状況になっていますからね。

中国でも鍋のシメに麺を入れます。素材が最高!!日本でも食べたいです!

カゼを引いたら漢方薬を飲む人がいます。
僕もカゼを引いた時に飲むことがあります。
「カゼの引き始めに葛根湯!!」
よく聞くのですが、本当ですか?

葛根湯は葛根、麻黄、白芍、桂枝、甘草、大棗、生姜から構成されおり、『傷寒論(しょうかんろん)』という漢方薬の経典の中に出てくる方剤です。
そこには「項背強几几、無汗、悪風者、葛根湯主之」と記載されています。
「うなじ、首の後部がこわばり、汗をかかず、風に当たるのを嫌がる人に葛根湯を使う」という意味です。
カゼの引き始めに上記の症状がある場合は葛根湯を飲みます。

ちなみに「几几」とは後頚部が冷えを受けたことにより首が動かなくなった様子を言います。
北京中医薬大学の銭超塵教授は「几几」を「殊殊(shushu)」という発音で読み、「短羽鳥飛几几也」という説は、成無己による八百余年の大いなる誤読であると批判しています。

身体の節々が痛み、寒気が強烈で、発熱するカゼには「麻黄湯」が用いられます。
麻黄湯は麻黄、桂枝、杏仁、甘草から構成される方剤です。
ですから、「節々が痛み、寒気が強烈で、発熱する」カゼには葛根湯ではなく麻黄湯が適しています。
ドラッグストアーでは葛根湯は売っていますが、麻黄湯は売っていませんものね。

また、「太陽病,発熱、汗出、悪風、脈浮緩、浮弱者」という状況には「桂枝湯」を用います。
桂枝湯を飲む時に重要なのは「汗が出ている」ということです。
そして、「脈が浮いていて緩い」ということ。
汗が出ず、脈が緊張している人には桂枝湯は向いていません。
手首にある、肺経上に位置する脈を診るのが「脈診」です。
脈診も漢方薬を決定するうえで非常に重要なことです。
中国医学を学んだことがあっても、脈診ができないようでは正確な漢方薬を処方するのは難しいです。

葛根湯、麻黄湯、桂枝湯はエキス剤で出ているので、必要な場合は病院で主治医と相談してみてください。

最近の中国では「清熱解毒(熱を冷まして解毒する)」の漢方薬が非常に流行っています。

その理由の一つとして、カゼを引いた時、現代医学では鼻炎、咳、中耳炎、のどが痛い、発熱などの症状は炎症によって起こると考えます。
その考え方をそのまま採用しているのでしょう。この問題を掘り下げる場合、中国医学の歴史に踏み込まなくてはならないので、またの機会にしますね。
そして、もう一つの理由として、大きな市場であるということです。

一つ目の理由により、カゼの時は「清熱解毒(熱を冷まして解毒)」するものである、と妄信している人が多いからと思われます。
もちろん、効果がないわけではありませんし、人によっては現代医学の薬より効く人もいます。
ただし、清熱解毒の薬は万人向けではありません。
普段から身体が冷え、食欲不振、下痢をしやすく、胃腸が丈夫ではない人、虚弱体質の人が清熱解毒の薬を飲むと、さらに症状が悪化する恐れがあります。

漢方薬は悪いのではなく、「誰が」、「誰に」処方するかが重要です。

僕自身、漢方薬に精通しているわけではありませんので、患者さんからどういう漢方薬を飲んでいるか教えてもらい、専門書を調べます。
それでも判断できない場合は、漢方薬の専門家が横浜、香港、北京などにいるので必ず尋ねるようにしています。
まぁ、漢方薬は自己判断では本当に難しいので、気を付けてくださいね、というお話でした。

くれぐれも身体にお気を付けくださいね。

それでは、再見!!

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この記事を書いた人

傳統醫學研究所日色鍼灸院院長。
約10年の中国留学の後、横浜中華街にて開業。鍼灸学士、医学博士。
世界医学気功学会常務理事。

鍼灸、気功、徒手療法などの施術を中心に、養生(生活習慣)の取り組みから身体をサポートする。

プライベートでは、5人の子供の父親。

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