ニーハオ!ひいろです。
今日の午前中に横浜市立盲特別支援学校の学生さんと教員の方々が当院に見学に来られました。
一時間半ほどお話と鍼治療と手技療法の実際の操作をご紹介しました。
何かの役に立てれば幸いです。
さて、鍼灸師という職業は、日本においては福祉、職業保護という面において視力障害者の職業の一つとして認識されています。
それは、江戸時代に活躍した杉山和一という鍼医者の功績によるものが大きいと言えるでしょう。
中国では、鍼灸師は医師です。
按摩マッサージ師も医師です。
中国医学の大学で学び、医師国家資格試験に合格する必要があります。
ですから、以前、中国で日本の鍼灸師について語ったことがあります。
「日本の鍼灸師で盲人の先生がいるのだが、とんでもない腕の持ち主なのだ」と伝えると「盲人がどうやって鍼治療をするのか?」と全く想像つかない様子でした。
これは、差別の話をしているのではなく、国の福祉と職業の制度と文化の違いです。
岐阜の大垣に盲人のある鍼灸師の先生がおられます。
私は、この先生のお陰で日本の鍼灸のすごさと素晴らしさを知ることができました。
いや、体感したと言った方がいいでしょう。
2004年3月、中国研修で通訳と参加者のアテンドをしたことにより、極度の疲労でカゼを引き、そこから中耳炎になってしまいました。
この年は、3月初旬に一つの団体、3月下旬に別の団体を受け入れて研修会が開かれました。
前半戦ですっかり疲労困憊の私は右耳の激しい痛みを感じていたので、薬を買いに行こうと思いました。
その晩、ちょうど後半戦の団体の中に、岐阜の先生が参加されることになっていました。
1999年から一緒に参加している先生だったので、お疲れのところ申し訳ないと思いながら、治療をして頂きたい旨をお伝えすると、快諾して下さいました。
先生の部屋に行き、治療をしてもらいました。
先生の鍼ははっきり言って痛いです(笑)。
子供の頃に、草刈りをしていて鎌で人差し指と親指の付け根を大きく切ってしまったそうで、人差し指の動きにかなり制限があります。
そのため、見た目はかなり不細工な鍼をされます。
日本人の鍼灸師は、よく「中国の鍼治療は痛い」と言いますが、日本の鍼治療も十分痛いと思いました(笑)。
ただ、痛いと言っても注射針を刺すような痛みではありません。
蚊に刺されたようなチクッとするような感じが連続してありました。
その時は、耳には鍼はしませんでした。
首の後ろに軽くチョンチョンチョンと接触するような技は使っていましたが、外くるぶしの上あたりをチクチクチクと刺激していました。
手首の脈を診ながら、体の状態を感じ取っていきます。
背中の皮膚の状態から経絡、内臓の状態を診ていきます。
治療時間は20分ほどだったでしょうか。
先生:ひいろさん、今どう?
ひいろ:あ!!!耳が全然痛くないです!!先ほどまで、耳を押すとグチュグチュと分泌液らしき音がしていたのですが、全くありません!!
先生:はい。じゃあ、おしまいね。
ひいろ:な、なんじゃあこりゃあ~!!(心の声)あのう、先生。普通、耳鼻科だったら、数日は頭を洗ってはいけないと言われそうですが、どうでしょうか?
先生:頭??まぁ、いいんじゃないの。
その日は普通にシャワーを浴びて休みました。次の日も全く問題ありませんでした。
深く刺さない鍼で、急性の症状がその場で治る。
それを目の当たりにした私は本当に興奮しました。
岐阜の先生は5歳の時に、焼夷弾で完全に失明してしまいました。
それから、鍼灸師の資格を取ったものの、按摩マッサージを生業にされていたそうです。
ある時、このままマッサージだけをやって歳をとっていくことに疑問を抱き、一念発起し鍼の経典『難経(なんぎょう)』を勉強し始めたそうです。
先生のすごいのは脈診の精度と手足をはじめ、お腹や背中の皮膚の状態を診て身体の異常を感じ取ります。
そして、適切なツボに治療を施していくのです。
どのくらい、脈診の精度が高いかというと、朝ごはんに甘い物、冷たいものを食べたのがわかるのです。
また、ある時は今排卵している、今生理の最中、今生理が終わったばかりということもわかるのです。
別の時に、研修会が開催されているホテルのラウンジでよく見かける店員さんがいました。
彼女とは顔見知りで、話をしていると、先生が「ひいろさん、この娘の脈を診せてもらえるかな?」と言われました。
彼女に、この先生は日本でも有名な鍼医者で、身体の状態を診てくれるよ、と伝えると、ぜひ診てほしいと言うのです。
先生がしばらく彼女の脈を診てから、私にも診るように言いました。
先生:ひいろさん、ここの脈(手首に指が当たっている場所)が硬いのわかる?
ひいろ:このピンピンして硬いやつですか?
先生:そうそう、それね。それから、この娘の目、赤くない??
ひいろ:え?目ですか?あ、確かに充血していて赤いです。
先生:そうでしょ。それから、この娘の腕、フニャフニャしていてものすごくやわらかいでしょ?
ひいろ:はい。かなりやわらかいです。
先生:そうでしょ?この娘ね。性生活がかなり盛んだよ。
ひいろ:ええええええええ!!!
後に、独自のルートでこの店員さんが恋人と同棲しているという情報を入手しました。
ラウンジの他のスタッフにそれとなく聞いたところ、上記の情報を教えてくれました。
脈診だけでもかなりの情報がわかるのですが、先生は目が見えなくても目の充血までを言い当てたのには本当に驚愕しました。
先生は、光も全く見えません。
まさに「功夫」です。
それから、この話を聞いて日色鍼灸院に来るのが怖くなったあなた。
私はここまでは脈がわかりませんので、安心してください(笑)。
今は夏です。
夏の脈は「浮いている」のが正常な脈です。
手首にそっと手を触れている状態で感じるのが「浮脈」です。
手首の骨のあたりまで沈めて感じるのは「沈脈」です。
夏なのに「沈脈」が出ていれば、病が古いか、身体の奥深くが冷えていることが考えられます。
最近、毎日、数人の患者さんに沈脈が認められます。
この時期に内と外から身体を冷やしてしまうと、秋以降、必ず夏の疲れが出てきますので気をつけて下さいね。
日本の鍼灸のすごさを目の当たりにした出来事でした。
そういう訳で、修行に励みます!!
再見!!!
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